漆塗りの器も継げます

お客様によくきかれる質問として次の2つがあります。

 

1、ガラスは継げますか?

2、塗りのお椀などは継げますか?

 

答えは、どちらも継げます。です。

 

ガラスはガラス用の漆を使用します。金継ぎ円家では、食品衛生法の基準をクリアした堤浅吉商店さんのガラス用漆と、箕輪漆工さんのガラス用漆を使用しています。

 

塗りのお椀の修理は本来、全ての塗りを剥がして塗り直すやり方なんですけど、そうするとほとんど作り直しに等しく、じゃ結構です。と言う人が多いと思いますが、金継ぎのやり方で部分的に直す方法で、塗りのやり直しとは一味違う仕上がりになって、それもありなんじゃないかと思い、依頼があればお受けしています。

参考までに、工程など。今回のご依頼は割れではなく、欠損と傷でした。

冒頭の画像をご覧ください。

 

 

欠損部分に麻布と糊り漆でパーツを建てて、まず芯を作ります。それに金継ぎんと同じ工程でコクソ→切子→錆と欠損部分を補ってからなだらかにしていくわけですが、なだらかに炭で磨いていく段階で、どうしても塗り部分が曇ってしまいます。

 

マスキングテープを細かく貼ってカバーして磨くやり方もありますが、際の部分はマスキングテープ1枚分の厚みがついてしまいますし、際の自然なカーブを損なう感じがしてあまり好きではなく、私はマスキングテープを

使いません。

 


 

きわきわが曇っているのがわかりますかね。なるべく広げないように磨いてもこんな感じになりますね。

曇った部分は、グラデーションっぽくしぶきな感じで蒔く方法を用いています。

傷も何もないところを蒔きますと、経年で少しずつ取れてくるので、最初は少し広範囲に蒔かれていても、

徐々に継いだ部分の面積に近づいていく仕組みです。

 


 

こんな具合に仕上がりました。どう継いで仕上げていくかは、お客様の要望とこちらからのご提案の折り合いがついたところで、完成させていくわけですが、その工程はとても楽しい時間です。

 

ありがたいのは、どのご依頼主様も「急いでいませんから」と言っていただける事です。

本漆を使った金継ぎのことをとてもご理解いただいているなと嬉しく思います。そう言われると、1日でも早く

御依頼主様のもとにお返しするべく、せっせせっせと金継ぐ毎日です。(毎日作業はしていません、嘘をつきました。笑 気持ちです。)

 

このお椀もお子さんの記念のお椀だそうで(詳しくは聞いていませんが)、一緒にご依頼されたお皿とともに

もう直ぐ自宅に帰れると思います。

お迎えに来られるか、ご送迎(送り)になるか。

 

出来上がったときは、本当に嬉しいもんです。